憲法・民法・行政法
はじめに:スー過去と導入本の役割
参照:スー過去・クイマスの内容
憲法の参考書と勉強法
憲法の概要とコツ
憲法とは、国家の役割を定め国の権力に縛りをかけるもので、立憲主義の考え方に基けば、私たち国民を守るためのものです。
また、国家の役割やその機関を定めていることもあり、そのもとで働く公務員を採用する試験では大体出題されます。
こうした重要科目である憲法の試験は、主に条文に関する判例や通説から出題されます。
たとえば最も有名な憲法の9条は↓
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権のやな発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
○2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
- 「国権の発動たる戦争」とは何を意味するのか
- 自衛隊は、「戦力」に該当するのか
憲法の勉強手順①:導入本で基礎を理解
憲法は法律科目であるため、上記のスー過去の項で述べたように導入本→スー過去のステップで勉強するのが基本です。
憲法の導入は省いてもok?
上記で述べたように憲法も導入本から勉強するのが基本なのですが、憲法の場合は中学の公民や高校の政治経済・現代社会などでそれなりに基礎を勉強してきた人も多いと思うので、いきなりスー過去から始める自信のある方(レジュメのみで事足りる方)は導入を省いてしまって良いと思います。少し復習したいというなら、スー過去と同じ実務教育出版から出されている、20日シリーズやスピード解説シリーズでサラッと基礎を抑えてしまうのもアリでしょう。
憲法の勉強手順②:スー過去で演習
導入本が終わったら、スー過去で過去問を解きながら演習を繰り返しましょう。公務員試験はアウトプットがとても大切。
憲法の勉強手順②+α:スー過去とともに判例集
- 経緯(事案の具体的な展開)
- 判旨(裁判官による判決と簡単な理由)
- 解説(著者グループによる解説)
憲法の参考書まとめ
導入本→スー過去・判例集
民法の参考書と勉強法
民法の概要とコツ
民法は、私法の一般法で実体法であると言われる通り、私人(国や国際間でなく一般人)同士の権利・義務関係を定めた基本法(特別法と対立する概念)であります。
よって、私たちの生活一般を司る大切な法であり、人々の生活環境をより良いものにするために働く、公務員を採用する試験では重要科目の扱いを受けています。
こうした科目である民法を勉強する際のコツは、分からない所が出てきても挫折せず、何回も導入本を回して民法独特の考え方に慣れる事です。
というのも、民法は私たちの基本的なルールを定めてると一概にいっても、
- 物に関する権利義務関係
- 家族に関する権利義務関係
- 契約に関する権利義務関係
など多くのルールを定めているため、全てを勉強したところでようやく全体像を掴める科目であるのです。
たとえば、契約に関する権利義務関係として、
- 売買のルール を勉強したところで、
- 売買する「物に関する」ルール
を学ばなければ売買についての確固たる理解を得ることはできません。
さらに複雑な事をいえば、
- 売買を行なったのが未成年であった場合
- 売買する物に担保が設定されていた場合
はそれぞれ制限行為能力者制度・担保物権といった別のルールも絡んでくるわけです。
このようにものすごく複雑に色々な事が絡んでくることから、民法を途中で諦める人は多いのですが、ルールはとても明瞭であります。
コツコツ勉強をしていって、全てのルールが分かってしまえば点数は意外と安定しますし、出題数も多いですから得点源にもなります。
分からないルールが出てきても、「まだ勉強してないんだから当たり前だ」と割り切り、少しずつ勉強をすすめていきましょう。
民法の勉強手順①:『伊藤真の民法入門』を導入本として読む
公務員試験の民法は、最近になるまで単純な暗記問題が多く、法律科目の中でも特に暗記がメインの科目として捉えられていました。
しかし、近年の民法は公務員試験の難化傾向を受け、考察・学説問題まで出題されるようになるなど暗記だけでは点を取りにくくなってきています。
こうした変化を踏まえると、ただ単に要件や効果を暗記するだけではなく、正確に理解をした上で多くの問題を解きながら民法的な考え方を身につけていく必要があります。
よって、きちんと導入本をやり大枠を掴んでからスー過去で演習を繰り返しましょう。
民法の導入本について、TACの出しているまる生という参考書もあり、ネット上ではオススメ参考書として紹介されている事が多いように思いますが、
郷原豊茂の民法まるごと講義生中継〈1〉総則・物権編 第6版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)
郷原豊茂の民法まるごと講義生中継〈2〉債権編 第5版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)
民法の勉強手順②:スー過去で演習
民法も基本テキスト・演習テキストはスー過去でキマリ!
譲渡担保・条件期限など細かい分野もレジュメ+問題の形式で網羅している上、過去20年程度の試験別出題頻度も記載されているので、足りない分野もなく志望先によっては細かい分野は飛ばす事ができます。
民法と判例集
民法に判例集は不要です。判例や事案が問題として出題される事はほぼありません。
民法の参考書まとめ
伊藤真の民法入門 →スー過去
行政法の参考書と勉強法
行政法の概要とコツ
行政法とは憲法や民法のように特定の法律ではなく、行政(国)に関する様々なルール・慣習・学説などを総称した科目です。
例えば、行政が行う行為にはどのようなものがあるのかを体系的に考えたり(特許・許可・禁止など) 、国家賠償などの行政訴訟はどのような場合に問題となりはたまたどのような手続きで行われるのかといった事を学びます。他にも、学説上の分類や国家賠償の判例など扱う範囲は膨大です。
そのためとても範囲の広い科目であり、かつ内容も曖昧で理解しにくいです。
コツとしては、行政法も民法と同じようにまずは全体像を掴むことです。というのも、例えば行政行為として飲食店に営業停止命令などの措置が行われた場合、行政の観点からみれば行政行為の内容が論点となりますが、営業停止命令を受けたお店側からみればそれは行政訴訟の1つである取消訴訟を行うか否かという論点になるわけです。
つまり全体像を掴まなければ深い理解を得ることができないのです。
全体像を掴んだら、次は判例を中心に具体例とセットで勉強をする事も大事です。「行政法」という法律がない以上、試験の勉強では学説や慣習など争いが多く曖昧な論点を学んだりするため、それらを深く理解するのに判例は重要な指標となるのです。具体的に判例がどう指標となるのか確認してみましょう。例えば、有名な判例として非番警察官強盗殺人事件があります。
この事件は、お金に困った警察官が、非番であった日に制服を着用して管轄外の地区で通行人を呼びとめ、所持品検査をし、反抗する通行人を発砲し殺害したあげく金品を強盗したという事件です。
この事件が行政法上問題になるのは、 この警察官の行為が国家賠償1条の「職務を行うについて」に当たるか否かという点です。
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
判決は結局、管轄外でも非番でも外形上職務を行なっていたように見えるのだから国家賠償の対象となると下されました。
条文も無論大切ですが、このように具体例である判例とセットで勉強することも、判例問題で点を稼いだり記憶を深いものにするために重要といえるでしょう。
行政法の勉強手順①:『行政法入門』で大枠から理解!
行政法は、上記で述べたように内容がアバウトであるためとっつきにくい科目です。
まずは導入本で大枠を掴みましょう。
導入本として他サイトでは、こちらもまる生を用いる事が推奨されていますが、使用した感想としてまる生はおすすめできません。
私は、行政法のプロ中のプロである藤田氏(旧最高裁判事)が行政法の入門者向けに書いた『行政法入門』をおすすめします。
行政法入門の良い点をあげると、説明が丁寧な上、具体例が豊富で理解しやすいところです。
たとえば普通の行政法の参考書では、「行政庁とは、みずからの名で行政主体のために意思決定し、対外的にこれを表示する権限を法令上与えられている行政機関のことをいう」なんて書いてあります。
私たちは、国に対して税金を納めなければならないこととされているわけですが、これを法律学的ないい方でいいかえてみると、結局、国が私たち国民に対して国税を徴収する権利を持っているということになるわけです。
ところで、この場合、この権利は誰の権利かというと、それは当然、法人格をもち、権利義務の主体であることを法律上認められている「行政主体」としての国だということになります。
ところが、実際の法律の上では、国民に対して現実に税金を強制的に徴収したりするのは、国そのものではなくて、単なるその一機関であるにすぎない税務署長の任務とされているのです。実際、課税処分や納税の督促などは「○○税務署長」という名前でなされています。この場合の税務署長の立場がまさに「行政庁」だ、ということになります。
- ページ数が多いのに抵抗がある方
- サクッと導入を済ませたい方
行政法の勉強手順②:『ケースブック行政法』で判例を学ぶ
行政法は、憲法と同じく判例が非常に重要です。先ほども述べたように指標となり、記憶を深いものにするために判例は必須なのです。
憲法の判例集と違う!と思った人もいるかと思いますが、行政法はケースブックの方が質が高く※(地裁や高裁の判例までカバー)一冊にまとまっているので使いやすいです。
藤田氏の『行政法入門』は具体例として本の中で判例を紹介している事も多いので、逐一ケースブックを参照し理解を深めましょう。
※行政法の百選が昔から改訂されていないという事情もあります
行政法の勉強手順③:スー過去!改訂版クイマスでもOK
何度も言いますが、行政法は大枠から理解するのがコツです。
行政法の参考書まとめ
行政法入門(藤田) or 伊藤真の行政法入門 → スー過去・ケースブック